横浜慶應チャレンジャーコラボ企画 〜慶應義塾大学体育会庭球部にインタビュー!第二回〜

前回に引き続き、慶應義塾大学体育会庭球部の皆さんとTennis Indexのコラボ企画。 横浜慶應チャレンジャーに関するインタビュー記事第2弾をお届けする。



新設備について

冨田:今回第10回目であるということに関してお聞きしていたのですが、その中で部室が新しくなるというお話が出ました。ライトやスタンドも新しくなったそうですね。設備が改善していくことでチャレンジャー大会にどのようないい影響があるのか、施設に関する違いをもう少し具体的に聞かせていただきたいです。


林:設備の変更として、まずスタンドの観客の収容人数が例年の4倍になりました。照明の照度は国際基準の750lxになり、正式にナイターでも公式試合を行えるようになりました。
これまでは悪天候などの理由により大会をスケジュール通りに試合を進められないことがありましたが、今度からは照明設備の改善もあり円滑に進めることができそうです。


冨田:今年はプレイヤーズルームの設備はどうなっていますか?


林:今年はまだ詳しいことは未定なのですが、インドアコートをプレイヤーズラウンジとして使用することになっているので、インドアはコートとしては使用しないようにと考えています。しかし新たに近隣の部活と交渉して施設を確保できた場合はインドアも通常通りコートとして使用できるかもしれません。
部室改築に関しまして、本音を言えば今年部室がないということは庭球部にとってかなり厳しい状況で、仮に部室があった場合には生まれなかったであろう課題がたくさん出て来ました。しかしそのような困難にも各部門がそれぞれ自分たちにできることを考えて、その中でどれだけいいものが作れるのかを模索してくれています。そういう意味では個人的にも来年以降の大会は楽しみにしているのです。


大学生が運営するチャレンジャー大会

岡崎:ありがとうございます。大学生が運営しているチャレンジャーは他にはないと思うのですが、具体的にどのような体制で運営しているのかを教えてください。


林:そうですね。体制で言えばまず庭球部員は各部門に別れており、その部門のトップが仕事を管理しメンバーに割り振っています。さらに各部門の上には総括がいます。総括は客観的な視点で部門の仕事を管理しており、仕事に抜けている箇所はないか、新しいことはできないか、さらによりよく出来ないかを模索しています。人数が多いことを生かし、膨大で幅広い仕事を1つひとつ細かく丁寧に処理できていると思います。


岡崎:大学の団体の特徴として、学年が上がるごとに先輩から後輩へ仕事を引き継ぐシステムが一般的だと思うのですが、その年に行ったことを次の学年が生かせるような工夫などあれば教えてください。


日下部:最終的には大会が終わった時にマニュアルを作り、その一年間にどういう風に仕事を行ってきたのかを綴ることで次の世代に伝えています。
しかしそれは最終的なもので、日頃から上学年たちはできる範囲で後輩に仕事を任せるようにしています。失敗をしてもいいから自分のできる限りの事をして欲しいという思いで仕事を任せているのでミスも出るし怒られることも多いとは思うのですが、その分成長していると感じています。


冨田:それに付随しまして。横浜慶應チャレンジャー大会は必ずしも毎年開催しなければならないものではないですよね。しかし毎年開催している、そのモチベーションとはなんなのか教えてください。


日下部:僕としては二点あります。1つは日本テニス界のために。もう1つはチームの成長のためにです。
チャレンジャー大会は現在日本に2大会しかありません。2019年からATPのルールが変わって日本人選手のプロが半分以上ランキングから除外され、同時にチャレンジャー大会のレベルもすごく上がってきています。今後日本人選手が活躍する機会と、活躍できる日本人選手がどんどん減ってしまうのではないのかという懸念が日本テニス界にはあります。
以前僕がアシスタントディレクターとしてATPチャレンジャーのディレクターの方とお話する機会があったのですが、その中でお話したのは、自国でチャレンジャー大会を開催することはものすごく大事なことだということでした。各国のトップ選手達の戦績を見ると最初に優勝した大会は自国開催の大会である場合が多いことが記録として残っています。僕自身調べたのですが本当にその通りでした。その理由を説明すると、自国で開催された大会だと言語の壁がなく、試合に出やすく移動もしやすい。そのような小さく感じるメリットもテニス選手にとっては大きな要因となるので、そう言った意味では優勝もしやすく日本人選手にたくさん機会を与えられます。
だからこそチャレンジャー大会を日本でやることはすごく大事です。各大会が開催を辞めていく中でも横浜慶應チャレンジャーだけはやらなくてはならないと感じています。
2つ目はチームの成長のためにということですね。慶應の選手がチャレンジャーのレベルで実際に戦って、それを部員が運営し応援することでチームの目線はどんどん上がっていきます。選手は勝ったらものすごく自信になるし、負けても得られるものはとても大きいのでいずれにせよ成長できると考えています。チーム全体としても大会中に経験を積み重ね、1つの大きなものを作り上げることでチームワークを高め合える。4月5月の早慶戦やその後のリーグ戦につながってくるものは必ずあると考えています。
チャレンジャーの大会に出ているレベルの人と試合できる機会はなかなかないですし、そのような大会を自分の大学が持っているということも、ものすごく大きなチャンスだと思っています。そこで勝ったら自信になるし、負けても通用する部分や逆に課題も明確に見えてくるので自分にとってのモチベーションに繋がります。


林:今村も大学一年生の時に福田と組んでポイントがガット入って…60位ぐらいまで上がったんだっけ?そのあと何個か大会に出て、全日本の本戦まで普通にランキングで出られるようになったよね。


今村:そうでしたね。


岡崎:慶應大学庭球部からアピールしたい横浜慶應チャレンジャーの魅力とは?


林:魅力はいくつかあるのですが、1番の特徴は学生が主体となって運営している大会ということです。大人が運営しているものと何が違うのかというと、僕たちは「手作り感」と呼んでいるのですが、学生ならではのアイディアや知恵を出し合って生み出した企画などがあるのです。そこには他にはない温かさや手作り感があると思っていて、それが1つの魅力だと思います。学生であることに言い訳をせずに、世界基準のレベルを目指す。それを達成することが、僕たちの最大の目標だと思います。


日下部:僕自身高校生の時から横浜慶應チャレンジャーのボーラーなど経験させてもらっていたのですが、その中で感じることは大会自体が自分たちに近い存在であるなということです。例えば高校生であることは関係なく実力があれば大会に出られるという特徴があり、それは他の大会にはないと思います。出場できる機会は確かに少ないですがゼロではないので、可能性を与えてくれる大会だと感じています。


林:選手との距離が近いのは1つのポイントですね。横浜慶應チャレンジャーはあまり仕切りを作らないのです。他にもインフォメーションボードやドローボードをおいているコーナーがあるのですが、そこで選手が関係者と話をしていたり、横を見ると日本のトッププロが話していたり。他の大会に比べて選手との距離が近い大会であると感じています。


岡崎:世界のプロと交流する機会は珍しいことだと思われますが、今までのそういった経験の中で何か驚いたことや印象に残っていることがあれば教えてください。


日下部:外国人の選手と触れ合う機会で面白いなと思うのは、当たり前なのですがやっぱり文化の違いですね。選手のホテルを管理したり、いろいろな要望に答えたりすることも学生がやっているのですが、その中で選手や国によって要望の仕方が違ったり態度が違ったり。そういうのはすごく面白いし学生としての学びにもなっています。
あとは広報部門を中心にインタビューもやっているのですが、いろいろな話を聞く中で選手たちのバックグラウンドも知ることができるのです。日本人と違ったことを経験して来たプレーヤー達が、今同じコートでプレーしていると思うとすごく面白いし視野が広がる気がします。本当にいろんな選手がいて、アメリカの大学を経てプロになったり、知らない国から来ていたり、それを知ることはすごく面白いです。




冠スポンサーについて

冨田:答えづらい質問になってしまうかもしれませんが。前回大会でこうしてインタビューさせていただいた時に冠スポンサーがいないという話をされていました。クラウドファンディングで資金調達をされているということだったのですが、冠スポンサーは付かないのか、それともあえて付けずに現状の資金調達の方法を取っているのか。付かないのであればその原因はなんだと思うのかお聞きしたいです。


日下部:それめちゃめちゃいい質問だと思います。
質問に答えると冠スポンサーは付かないです。しかしそれが逆に横浜慶應チャレンジャーの強みでもあります。
付かない理由としてはチャレンジャーの魅力が伝わりづらいということがあると思います。運営している身からしたらものすごく魅力あふれる大会なのですが、外部の人から見たらまだまだ注目度が低い。ものすごくトップの選手が出ているわけでもなく収入も少ないので何か大きいことができるわけでもない。価値がわかりづらいというのは正直あって、それがスポンサーの方々からお金が出づらい理由であると考えています。そのような中で私たちは学生として、どのような形でチャレンジャー大会をスポンサーの方々にお届けできるかを日々考えています。
一方で冠スポンサーがつかないことが強みであるとも考えていて、いろいろなスポンサーの方々にご支援していただいている事で、例えば何かのきっかけで1つの会社が支援できなくなったとしても他の応援して下さる方々がいるので大会を継続して何年も続けることができる。逆になぜ日本の他の大会がなくなってきているのかというと1つの冠スポンサーに頼ってしまっている部分があって、そこが何かのきっかけで途絶えてしまった時にその大会資金がゼロに限りなく近くなってしまうからなのです。だから冠スポンサーがつかないということは横浜慶應チャレンジャーの強みでもあると言えると思います。


岡崎:冠スポンサーがついていなくともチャレンジャーが運営できているという事例が珍しいと思いますが…。


日下部:本当に冠スポンサーがついていないチャレンジャー大会は世界で見てもすごく少ないと思います。ATPのサイトからいろいろな大会を見てもどこかの企業の名前がついていることがほとんどなので…横浜慶應チャレンジャーはすごく特殊なモデルだと思います。その最たる例として、これほど多くの人々に支えていただいているチャレンジャーも珍しいです。それも、学生70人が運営するチャレンジャーでなければ成り立たないことだと思います。


冨田:こういう形の大会が今後増える、または増えるべきだと思いますか?


日下部:最初のステップとして大事なことはチャレンジャー大会の価値を広めたり認識させたりすることだと思います。そこを理解していないとスポンサー側としてもなんでお金を出すのかわからなくなってしまうので。


次回は最終回。大会に関するさらにニッチな話をお届けします。



協力
日下部健吾:慶應義塾大学体育会庭球部3年
林優太朗 :慶應義塾大学体育会庭球部3年

インタビュー
冨田大貴・岡崎恵大